TOP 特集 伊勢神宮は今、日本でいちばん足を運んでみたい場所
伊勢神宮は今、日本でいちばん足を運んでみたい場所

私の日本の本

伊勢神宮は今、日本でいちばん足を運んでみたい場所

伊勢神宮は今、日本でいちばん足を運んでみたい場所

メアリーアン リボティ デ ベルリスさん

61歳 テキサス州ヒューストン在住

ニューヨーク市ブルックリン生まれ、フォーダム大学で西洋美術史専攻。卒業後は大手書店のマネジメントやマーケティングを担当。金融業界で働く夫の赴任に伴いヒューストンへ転居し25年が経つ。テキサス大学(UT Health)にて公衆衛生学修士号、セント・トーマス大学にて美術史修士号を取得。美術や歴史に強いキャリアを活かし、英語に加えて人文科学、歴史、哲学などを教える個人講師として15年以上も活躍。写真下の日本の手工芸品はすべて日本人生徒たちからの贈り物。「源氏物語」や「東海道五十三次」など日本美術を愛するメアリーアンさんの好みを熟知したものばかりだ。背景に見えるのはメニル コレクション美術館の屋外彫刻、マイケル・ヘイザー作『Charmstone』(1991年)。

 メアリーアンさんの肩書きは、個人講師。 ビジネスマンや駐在員の妻、学生などを相手に一般教養も含めた英会話やライティングを教えている。撮影場所として選ばれたメニル コレクションは彼女のお気に入りの場所。大学、大学院でアートを究めてきたメアリーアンさんにとって、作品や美術史の解説は生徒たちに生きた英語を楽しく、効率的に学んでもらうための格好の題材だ。彼女と日本をつなぐきっかけも、やはりアートだった。

「6年前、日本美術の展覧会をヒューストン美術館で鑑賞したんです。日本画をはじめ、陶器や漆器の素晴らしさに心を打たれました。16から17世紀に描かれた屏風絵や「源氏物語」の絵巻、「東海道五十三次」の浮世絵が特に心に残りましたね。凝視すると、そこには日本の四季、情緒や風俗を垣間見ることができて、その世界観と美しさに感服しました。これは衝撃的な体験で、繰り返し5・6回はその展示を観に足を運びました。私がどのくらい日本の古典美術に魅了されたのか、想像がつくでしょう?」。

 さっそくメアリーアンさんは日本語を学び始め、「源氏物語」ほか日本の歴史や文学、美術の本を読破していったそう。そこから日本人との縁ができ、現在は彼女の抱える生徒の半数以上が日本人になったとか。「生徒の自宅を訪ねると、スリッパを用意してくれたり、お茶を出してくれたりと日本人独特の敬意やきめ細やかなもてなしをうけます。こんな小さな驚きの積み重ねによって、ますます日本という国が好きになりました」。 

 メアリーアンさんは、まだ日本を訪れたことがない。その日が来たら、京都はぜひとも足を運びたいと願っている。また、生徒たちから「興味が合うはずだから絶対に行くべき」と薦められた伊勢神宮にも強く惹かれている。この写真集と出会い、その思いをいっそう強くしたそう。

伊勢神宮は神道最高位の社で、山海に囲まれた特別な聖域だというくらいの知識はありましたが、この本を読んで、漠然としていた神道の哲学がとても明確になりました。私はカトリック教徒ですが、“創始者も聖典もなく神はそれぞれの心に浸透している”という神道の考えは、とても個人的で、精神的な強さと美しさを感じます。清浄で高貴な空気が張りつめる神宮内で、今でも多くの伝統祭事や儀式が行われているとは、なんて神秘的なことでしょう。また20年に一度神殿を建て替えつづける風習なんて、世界では稀なこと。一生に一度は、と日本全国から人々が安らぎを求めて伊勢神宮を訪れるのですよね? 私自身も当時の儀式や祭事、伝統を思い浮かべながら、その巡礼路をたどってみたいと強く願います」。目下、今年の秋にひとりで日本を周遊しようと計画している。

Ise Jingu and the Origins of Japan

日本の神社の頂点「伊勢神宮」を知る写真集

とても美しい本で、表紙を飾る澄んだ五十鈴川にかかる宇治橋や、緑豊かな山々の四季の移ろい、田の神様に感謝する稲の祭りなど、写真一枚一枚が風情と清らかさにあふれ、ページをめくるたびにため息が出ます。世界の聖地を巡る写真家でもある著者のバックグラウンドも興味深く、読んでると彼女と一緒に聖地巡礼の旅をしているような気分になりました。あまりに素敵な本なので、日本人の生徒たちにこれを英語の教材として贈りたいと思っています。巻頭ページのイラストマップは、これから訪れる人にとって神宮のコースをイメージしやすいと思いますよ。それを見ながら、伊勢近郊に点在する大小125社巡りはもちろんのこと、太古から神と共にある田園や塩田を歩く自分を想像しています(笑)

(メアリーアン・リボティ デ ベルリス)

取材/グラント里香 英訳/デヴォン・ダンカン 編集/藤田 優