古寺を巡る
北鎌倉の円覚寺を巡る
宝冠釈迦如来坐像
広々とした仏殿の正面に須弥壇が設けられ、豪奢な宝冠を頭上に戴いた釈迦如来が、禅定の姿勢で鎮座している。
如来像はふつう頭髪を螺髪であらわし、装身具をつけないが、円覚寺の本尊は髪を結い上げて宝冠や瓔珞で荘厳された、菩薩のような姿を示している。
このような像を宝冠釈迦如来像といい、「華厳の釈迦」とも呼ばれる。それは禅宗における中心経典である『華厳経』において、教主の盧舎那仏と釈迦如来が同体であると説かれていることによる。宝冠釈迦如来は宋から伝来し、鎌倉の禅刹を中心に流行したが、円覚寺仏殿の本尊はその先駆的な例であり、かつ最大の像である。
1563年(永禄6)の仏殿焼失の際に本尊も焼けたが、かろうじて面部だけが救い出されたという。身体部は1625年(寛永2)に補造され、現在の姿となった。したがって、頭部が創建当初の鎌倉時代、身体部が江戸時代ということになる。宋風彫刻の影響を受けた面貌は、華麗であるとともに、禅林にふさわしい厳格な表情をたたえている。
仏殿
本尊を安置する仏殿は、大光明宝殿、または普光明殿とも呼ばれる。1282年(弘安5)の創建以来、幾度も罹災しては復興された。現在の仏殿は、江戸初期に再建された仏殿が1923年(大正12)の関東大震災で倒壊したのち、1964年(昭和39)に鉄筋コンクリート造りで再建されたもの。設計のもととなったのは1573年(元亀4)の指図(設計図)であり、禅宗様をふまえた堂々たる佇まいである。
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文/小学館ウイークリーブック 「古寺を巡る35」 写真/原田 寛 英訳/インターブックス 編集/デヴォン・ロイス・ダンカン