TOP 特集 早稲田大学坪内博士記念演劇博物館ー通称「エンパク」
早稲田大学坪内博士記念演劇博物館ー通称「エンパク」

歌舞伎

早稲田大学坪内博士記念演劇博物館ー通称「エンパク」

早稲田大学坪内博士記念演劇博物館ー通称「エンパク」

第三回 欧米と日本の劇場文化

上の写真:
春仙画「六世中村歌右衛門 道成寺の白拍子」(1951年)

下の写真:
初代歌川国貞画「関の扉」(1837年)

ここ数十年にわたり、劇場文化は日本でも欧米においても劇的に変わりました。エンパクの副館長・児玉竜一氏は、これまでにないほど海外からの演劇ファンが、日本の伝統演劇を楽しむため劇場に足を運んでいると言います。「外国の方のほうが、より濃い情報をもとめているのかもしれません。母国で自国の芝居をよく観ているからこそ、わざわざ観に来ているのでしょう」。80年代ごろから、日本人の歌舞伎初見者は、外国人と同じような目で歌舞伎を見ていると児玉氏は分析。「まさに中村勘三郎(18代目)丈のような役者たちが揃って一番危惧していたのは、日本人も外国人と同じような目で(予備知識がない状態で)歌舞伎を観に来るようになったことです。昔と変わらない内容では、日本人さえ劇場に来なくなってしまう。そういう意味では、まさに外国人客に理解しやすくすることが歌舞伎の発展にとっても重要です」。

欧米では日本より演劇が生活に根付いているため、旅行者でさえ、日本の伝統演劇を鑑賞するための努力を惜しまない、と児玉氏は語ります。「日本人もロンドンのブロードウェイまでミュージカルを観に行っていますが、“本場は日本とどう違うのか?”をただ知りたいためではないかと感じます。ミュージカルは本やガイドブックで調べなくても、充分に楽しめる。しかし歌舞伎を観るなら、日本人でも物語や歴史的背景、言葉使いを少しは知っていたほうがいい。歌舞伎を観に来る外国人の大多数は(演劇的な素養のある)欧米人であることからも明かですね」。

歌舞伎など日本の伝統芸能の基礎知識を身に付けたい人に児玉氏がすすめるのは、「歌舞伎と文楽のエンパク玉手箱」という新刊本と、この9月に創刊111周年を祝う月刊誌「演劇界」です。

歌舞伎と文楽のエンパク玉手箱

『演劇界』とのコラボレーションで生まれたバイリンガル歌舞伎ガイド

江戸時代から庶民の娯楽として日本の大衆文化に根付いた歌舞伎と文楽。この図録は、早稲田大学坪内博士記念演劇博物館(通称エンパク)90周年を記念して出版され、その幅広いコレクションから精選された所蔵品を掲載したものです。貴重な鶴屋南北の自筆や浮世絵など、研究書としても保存版の一冊です。この図録は、日本でもっとも古い演劇雑誌「演劇界」とのコラボレーションで完成しました。

写真/早稲田大学坪内博士記念演劇博物館 取材/デヴォン・ロイス・ダンカン