「私の日本の本」
娘には自分よりも完璧な日本語を学ばせたい
“Ama-chan”、これはローラさんが娘を呼ぶときの愛称。女性の名前に“ちゃん”をつけて呼ぶのは日本特有の習慣だが、日本滞在の長かったローラさんはもちろん知っている。日本流の呼び名に限らず、家庭内の言語は日本語に限るというほど徹底して日本文化に親しむようにひとり娘を育てている。「あまちゃんには私以上に日本語を流暢に話すことができるようになって欲しいの。多様な世界の夕化を完璧に理解することを身につけることでしか視野が広がらないわ。寝る前の絵本の読み聞かせも、もちろん日本語よ。彼女は日本製の絵本やDVD、おもちゃや文房具が大好き。最近はテレビ放映の影響もあって、ドラえもんに興味をもち始めたところだわ」。ニューヨークの紀伊国屋書店で本書『ドラえもんのどこでも日本語』を手に取ったのも、ドラえもんに反応をするようになった娘さんの影響があったそう。「日本の生活に沿って、日本語の活用法が書かれているところが気に入りました。しかもドラえもんの漫画が入ってわかりやすい! ここにある会話例は6歳の娘にはまだ早いけれど、成長したら同じようにふるまうのではないかしら」。以下はニューヨークのジャパンソサエティの主催する七五三のイベントに参加した記念写真(あまちゃん3歳のとき)。
毎週土曜日、あまちゃんは語学を学ぶために日本語学校の幼児部に通っている。通い始めてから、日本人の友だちもたくさんできたそうだ。遊びながら、生きた日本語を学ぶことがいちばんの理想だとローラさん。「大学時代に初めて日本で暮らしたときの私の経験がそう思わせるのかしらね。アメリカで日本語の基礎は学んでいたものの、実際に暮らして、学んで、働いてみると日本語の複雑さ、微差の表現の難しさに直面したんです。日本語は複雑で奥が深い。でもそれがわかったから、日本語・日本文化にさらに興味をもてたし、その後の進路や日本美術のキュレーターというキャリアを選ぶことにつながったと思っているんです。その国の言葉を流暢に話すためには、習慣や文化を熟知して身につけることが欠かせないわ。日本語の場合にとても時間がかかるけれどね」
ドラえもんのどこでも日本語
漫画を通して生きた日本語を学ぶ
漫画で実例を挙げながら日本語を学ぶことができるこの形式は、楽しく語学を習得するツールとして最適ですね。留学経験も数回、京都と金沢に暮らしたことのある私にはここに描かれている日本の年中行事や生活習慣はなつかしいものでした。そして初めて日本で暮らしたときのさまざまな戸惑いや気づき、発見を思い出すきっかけにもなりました。
(ローラ・ミューラーさん)
取材/高久純子 編集/藤田 優