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京都の建仁寺を巡る

古寺を巡る

京都の建仁寺を巡る

京都の建仁寺を巡る

第1回:俗を背にした禅の道場

上の写真:

勅使門(ちょくしもん)(重文 鎌倉時代)
切妻(きりづま)造り、銅板葺(ぶ)きの四脚門。平清盛(きよもり)の嫡男重盛(しげもり)の六波羅邸(ろくはらてい)から移したものと伝えられる。扉などに矢痕があることから、「矢の根門」または「矢立門」ともよばれる。

祇園の花見小路の石畳の道を歩んでゆくと、建仁寺の渋い土塀があらわれ、自然と境内にいざなわれる。

 建仁寺は、京都最古の禅寺として、800年余りの歴史を誇る。正式には、臨済宗建仁寺派大本山東山建仁寺という。観光名所として名高い八坂神社や円山公園にほど近く、周辺は年間を通じて観光客が絶えない。花街である祇園と隣り合わせに建ち、厳しい修行で知られる禅寺との取り合わせが愉快にも思える。

 町なかにもかかわらず、境内はのびやかに広く、お茶の木や松の緑がすがすがしい。その中心に、禅宗寺院特有の伽藍(がらん)が南北に建ち並ぶ。周囲を荘厳な雰囲気の開山堂や塔頭(たっちゅう)寺院がものものしく取り囲み、いまもなお、禅の修行道場としての伝統を感じ取ることができる。

 本坊の拝観受付から方丈に上がると、まず迎えてくれるのが、桃山絵画の白眉(はくび)といえる俵屋宗達  筆の国宝「風神・雷神図」屛風ぶである。複製ではあるが、歴史や美術の教科書などでも紹介されている作品なので、なんとも懐かしさを覚える。散策に疲れたら、方丈の緋毛氈  に座って庭園をながめよう。ここでは、時間さえのびやかにゆっくりと流れる古くは中国式に「建寧寺」と書かれ、親しみを込めて「けんねんさん」とよばれた。そんな、大らかな気風が漂う。

失われゆく日本

世界的に貴重な湿板光画と新しい日本論

著者は黒船ペリーの随行カメラマンの一族で、幕末時代の写真技法(湿板光画)で「時を超えた日本」の記録に取り組んでいる。明治維新150周年の今、縄文時代から続く素晴らしい「精神性」と「身体感覚」を伝える。

文/小学館ウイークリーブック 「古寺を巡る44」 写真/水野 克比古 編集/矢野 文子