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すきやばし次郎で本のお土産を2018/04/05

すきやばし次郎本店の予約待ちは1,000件以上、予約ができなかった外国人観光客が、せめてもの旅の記念に写真に撮っては帰って行く。その際、土産がわりに購入していくのが、『すきやばし次郎 鮨』『すきやばし次郎 匠』の2冊だ。小野二郎さん(写真)が丁寧に筆で一冊一冊したためたサインは、同じ手で握られた鮨を食べることがかなわなかった旅行者にとって、何よりの“ごちそう”なのだ。累計10,000冊もこの店で売れている。

「築地から上海やシンガポールにその日のうちに魚が届く時代ですけど、魚と一緒にこれを何冊か入れて送ってるそうですよ」と店長で二郎さんの長男の禎一さんは言う。「鮨という字は魚ヘンに旨いと書きますしね、外国の方に日本の魚のこと、鮨のこと、正しい食べ方を伝えたいという思いでこの本を作りましたから」。鮨が乾くのをよそに写真を撮ったり、箸でうまくつかめず落としたり、鮨の食べ方を知らない外国人客も、近頃は減ったそうだ。「欧米人はテーブルで会話を楽しみながらゆっくり食事をする習慣があるけど、鮨屋のカウンターは違う。鮨が出てから長々おしゃべりしたりせず、職人の心意気も一緒に素早く食べるのが江戸前の粋なんです」。これを聞いて耳が痛い日本人にとっても、入門の書に違いない。

 

 

“九つから十六まで修行に入り、一通りの仕事は覚えたところで軍事工場に徴用され、そのまま軍隊に入らされました。戻っても、戦争に負けた日本は貧しかったから、鮨なんてしばらく握れなかった。そんなときからずっと、今やれることを全部やるのが当たり前だと思って握ってきたから、現在の私があります。こういったことを言うと自慢だと誤解される世の中になりましたが、近頃の若い人は言われたらやるけど、言われなくても技を見て盗むぐらいじゃないと、職人は一人前にはなれません。司郎(シアトル「Sushi Kashiba」の加柴司郎さん)でも人一倍やってきたからこそ、頭ひとつ抜きん出ることができた。海外に鮨を伝えるなんて並大抵のことではありません” 

(小野二郎)

写真・文/「日本の本」編集部 英訳/ケイト・クリッペンスティーン