私の日本の本
元在日アメリカ人夫婦の英日バイリンガル子育て
サラさんの隣に座るイーライ君3歳。図鑑にあるシマウマの写真には、「しまうま」「zebra」と日英表記があり、サラさんが指さすと元気な声で「SHIMAUMA」と返ってくる。イーライ君はまだ日本語を読むことができないというのに、大好きな動物や乗り物はすでに耳で覚えてしまったとか。ちなみに4歳になる姉のセーシェルちゃんは、同じ発音で日本語の単語がすらすらと口から出てくるそう。それもそのはず、イーライ君とセーシェルちゃんは週に5日、交代で5人の日本人の先生に1日2〜3時間ずつ日本語を習っているのだ。
「私たち夫婦が日本で過ごした3年は、驚きや学びに満ちあふれた、”まったく新しい世界を見る視点”を養った特別な日々でした」とサラさんは振り返る。印象に残ったのは、なににつけてもスムーズにことが運ぶ日本の融通の良さ。「クリーンで時刻通りに発着する鉄道システム」には特に感動したそうで、京都や鎌倉のお寺巡り、札幌の雪まつりなど出産前はふたりで鉄道を使ってたくさん旅に出た。「夫は”モノより体験や経験にお金を費やす”主義なんです」。
日本語で書かれた幼児向けの本は、本屋通いだけでなく、ヒューストン在住の日本人を通してコツコツと集めてきた。推薦する「はじめてずかん415」は数ある幼児本の中でも大のお気に入り。「タンポポは娘が初めて覚えた日本語で、春先にうれしそうにタンポポを摘んでいたな、とか、見ていると日本でのさまざまな思い出がよみがえってくるんです。こんな楽しみ方もできるので、日本在住経験がある日本語初心者の外国人のママにもぜひ読んでもらいたい本ですね」。図鑑で遊ぶイーライ君を眺めながらサラさんは言葉を続けた。「日本は娘と息子が生まれた国で、私たちが敬意を払う国。だから彼らの第2言語として日本語を選んだのは自然な流れです。子供達が日本語を習得することで、自信をもち、多文化に寛容なオープンマインドな人間に育ってほしい。将来は日本や世界を視野に仕事ができるように、と願っているんです」。
はじめてずかん415
身近な様々なことから「日本」がわかる、大人も子供も楽しめる図鑑
息子の大好きな”のりもの”だけでもなんと57種。ひとつのジャンルで、こんなにもバラエティに富んだ情報量がある幼児用図鑑はアメリカにはないですね。端末と連動させると日英2ヶ国語の音声が聞けるので、ふたりとも夢中になってボタンを押して発音をリピートしています。私としては子供達に語彙を覚えさせるだけでなく、『日本の宅急便はすごく便利なのよ』など、この図鑑を通して日本人の文化や習慣も教えています。
(サラ エドワード)
写真・取材/グラント里香 編集/藤田 優